和名なし

 ツリミミズ科シマミミズ属 > 和名なし Eisenia anzac Blakemore, 2011

Eisenia anzac Blakemore & Grygier, 2011: 267; Blakemore, 2012b: 17.

タイプ標本

基産地:神奈川県横浜市保土ケ谷区の英連邦戦死者墓地に隣接した公園

タイプ標本所在地:Hungary Natural History Museum, Budapest (標本No. HNHM/15529)

形態

<外部形態>

 全長 50 mm、体節数 139。

 体色は黄色みを帯びるが、正中線はより暗色で紫色。環帯はバフ色。体型は円筒状であるが、尾端は平たくなる。第一背孔は第 3/4 体節間溝に開口する。剛毛は近接する。

 口前葉は上口前葉を呈する。受精囊孔を欠く。環帯は鞍型で第 22-30 体節を占める。性的隆起壁は1対の乳頭突起であり、b 剛毛線上のすぐ背面にあり、第 26 体節を中心に第 25、27 体節まで広がる。隆起剛毛は目立たない。雌性孔は第 14 体節の b 剛毛線上のすぐ背面に小さく突出する。雄性孔は第 15 体節の bc 剛毛線の中央にあり、小さく、環帯までかすかに暗色の精溝が続く。腎管孔を欠く。

 

<内部形態>

 咽頭は第 3-4/5 体節間溝まで続く。隔膜は第 13/14 体節間溝を除いて薄い。心臓は第 7-11 体節。石灰腺は第 12 体節にある。砂嚢は大きく、第 17-18 体節。腎管は巨大腎管で、ソーセージ形。雄性生殖器は大きく、精巣は第 10/11、11/12 体節の隔膜に付着し、精管は第 12/13 体節間溝で体壁に開口する。貯精嚢は1対で、第 11/12 体節隔膜では小さくて痕跡的、第 10/11 体節隔膜よりまえでは小さく、以降では大きい。卵巣は第 13 体節にあり、太い卵管を持つ。

 


分布

 神奈川県横浜市で得られたタイプ標本が得られた後、記録見当たらない。

備考

 学名の種小名 anzac は、戦死者墓地の近くからANZACの日に採集されたこと、採集された地点のすぐ近くにユーカリの木(オーストラリア起源)があることから、命名された。なお、「ANZAC」とは、オーストラリア・ニュージーランド軍国(Australian and New Zealand Army Corps)の略称である。

 

 受精囊および受精囊孔を欠くため、単為生殖を行っていると考えられる (Blakemore & Grygier, 2011)。なお、本種が在来種・外来種であるのかどうかは不明であり、外来種であったとしたら起源も不明であるが、ユーカリの木(Melaleuca sp. と Agathis sp.)の近くで発見されたことから、ヨーロッパやカナダ、インド、オーストラリア/ ニュージーランドを経て植物とともに移入された可能性が指摘されている (Blakemore & Grygier, 2011)。


 近縁のサクラミミズとの識別点は、環帯が22体節から始まること(サクラミミズは23, 24〜30, 31体節、ただし個体変異の検討不十分)、性的乳頭が26体節にあること(サクラミミズは第27体節のみ、もしくは第27体節と第29体節)、受精嚢を欠くこと(サクラミミズは第9体節と第10体節に持つ)。

シノニムリスト

Eisenia anzac Blakemore & Grygier, 2011: 267.

Eisenia anzac Blakemore, 2012b: 17. [記述のみ] (Feb 28, 2012)

引用文献

Blakemore, R.J., Grygier, M.J., 2011. Unraveling some Kinki worms (Annelida, Oligochaeta, Megadrili, Lumbricidae)- Part III. Soil Organisms 83(2): 265-278.

Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.